mysqldump – MySQL/MariaDB の論理バックアップを作成するダンプツール

mysqldump は、MySQL/MariaDB のデータベースやテーブルを SQL 形式（CREATE TABLE と INSERT 文）でエクスポートするコマンドです。
実務では、定期バックアップ、移行、特定テーブルだけのエクスポート/インポート、スキーマだけの出力などに使います。

構文（Syntax）

# 基本（対話的にパスワード入力推奨）
mysqldump -h HOST -P PORT -u USER -p [OPTIONS] DB [TABLE ...] > dump.sql

# 複数DB / すべてのDB
mysqldump [接続オプション] --databases DB1 DB2 ... > dump.sql
mysqldump [接続オプション] --all-databases > alldb.sql

# スキーマのみ / データのみ
mysqldump [接続オプション] --no-data    DB [TABLE ...] > schema.sql
mysqldump [接続オプション] --no-create-info DB [TABLE ...] > data.sql

# 一貫性スナップショット（InnoDB）でのオンラインダンプ
mysqldump [接続オプション] --single-transaction [--quick] DB > dump.sql

• パスワードは -p のみ指定し、標準入力で入力するのが安全です。
• 認証情報は --login-path（mysql_config_editor）や --defaults-extra-file での利用が推奨です。

主なオプション一覧

メモ：ネットワーク圧縮は --compress（転送圧縮）。出力の圧縮は gzip など外部コマンドで行います。

実行例

1) 単一データベースを一貫性スナップショットでバックアップ（推奨）

説明: InnoDB のオンラインバックアップに適した方法です。
コマンド:

mysqldump -h 127.0.0.1 -u backup -p \
  --single-transaction --quick --routines --events \
  --default-character-set=utf8mb4 shop > shop_$(date +%F).sql

2) 構造だけ/データだけを分けて出力

説明: スキーマ移行や後続のロード最適化に。
コマンド:

# スキーマのみ
mysqldump -u root -p --no-data shop > schema.sql
# データのみ
mysqldump -u root -p --no-create-info shop > data.sql

3) 条件付きで一部のデータだけを抽出

説明: 今日分の注文だけを抽出します。
コマンド:

mysqldump --login-path=report shop orders \
  --where="created_at >= CURDATE()" > orders_today.sql

4) すべてのDBを丸ごと取得して圧縮保存

説明: フルバックアップを日付付きで保存します。
コマンド:

mysqldump --login-path=backup --all-databases \
  --single-transaction --triggers --routines --events \
  | gzip > full_$(date +%F).sql.gz

5) エラー例：権限不足で --master-data を使用

説明: バイナリログ座標を含めるには RELOAD, LOCK TABLES などが必要。
コマンド:

mysqldump -u user -p --master-data=2 shop > dump.sql

出力例（例）:

mysqldump: Got error: 1227: Access denied; you need (at least one of) the SUPER privilege(s) ...

対処: 必要権限を付与、または --single-transaction のみで取得。

関連コマンド

• mysql : ダンプの復元（mysql < dump.sql）や確認に使用。
• mysqlpump : 並列ダンプ/復元に対応した MySQL 公式の別ツール。
• mydumper/myloader : 高速並列ダンプ/ロードのサードパーティ。
• xtrabackup（物理バックアップ）: Percona のホットバックアップツール（InnoDB）。
• gzip / zstd : ダンプの圧縮保存。

備考

• 一貫性: InnoDB 前提なら --single-transaction を使うのが基本。MyISAM を含む場合は整合性のため --lock-tables 等が必要。両者は併用不可。
• 大規模データ: --quick（逐次フェッチ）、--hex-blob（バイナリ安全）、--order-by-primary（復元のインデックス効率）を検討。
• 認証情報の扱い: コマンドラインにパスワードを直接書かず、--login-path（mysql_config_editor）または --defaults-extra-file=/path/secret.cnf を利用。
• 互換性: MySQL 8 系クライアントで MariaDB/古いサーバへ接続する場合は --column-statistics=0 を付与するとエラーを回避できることがあります。
• 復元の注意: ダンプは 論理バックアップ。大容量では復元に時間がかかります。重要システムでは物理バックアップとの併用を。
• トリガ/イベント/ルーチン: トリガは通常デフォルトで含まれます。ストアドルーチンやイベントは --routines/--events を明示。
• 文字コード: 文字化け防止に --default-character-set=utf8mb4 を明示し、復元側でも適切な character_set_server を確認。

参考

• MySQL 公式: mysqldump — A Database Backup Program
  https://dev.mysql.com/doc/refman/8.0/en/mysqldump.html
• MySQL 公式: Option Files（--defaults-extra-file など）
  https://dev.mysql.com/doc/refman/8.0/en/option-files.html
• MySQL 公式: mysql_config_editor（--login-path）
  https://dev.mysql.com/doc/refman/8.0/en/mysql-config-editor.html
• MariaDB KB: mysqldump（MariaDB での挙動・相違点）
  https://mariadb.com/kb/en/mysqldump/
• manページ（Ubuntu）
  https://manpages.ubuntu.com/manpages/jammy/en/man1/mysqldump.1.html